青い部屋

ぼくのママン其の六:子育てエッセイストー売文家戸川昌子

mama07

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戸川昌子は文を売ったーーー
まるで自分の身体を売る娼婦のようにーーー
ありとあらゆる自分の人生に関わるものを文章に変えて売り飛ばしていった。
そこには何の見境もなく、売れるものならなんでも売っていった。
ストリッパーみたいに明け透けにーーー

自由奔放なる自分の性遍歴ーーー
不倫男との危険な情事ーーー
夫との家族を巻き込んだ確執の一部始終ーーー
そしてもちろん俺のこともーーー

何よりこの俺に関する売文は大ヒット商品となった。

超高齢出産
別居結婚
本当の父親は誰なのか
子育て奮闘記
母となった自分の心境
愛息と自分の成長録

書くことは無限に、そして多面的に沢山ある。
男との不倫エピソードなどせいぜいが数週間読者の気を引く程度だったろう。
けれど、このネタは違う。
時間の経過とともに様々な変化が起こり続けていく。
子供と一緒に自分も変化していく。
人気売文家としていくつもの連載コラムを抱えていた戸川にとっては、まさに砂漠でオアシスを見つけたような気分になったことだろう。

俺は売文家戸川昌子からの観察の対象となったーーー

立ち上がった。
積み木で遊んだ。
今日はつまらなそう。

横目で俺のことを見ながらそういった日常の出来事に様々な言葉の装飾をつけ、そこに自分の雑感を加える。まるで朝顔の観察日記のように。

朝起きてパッと庭を見渡す。
あら、芽が出て来たわ。
今日は葉っぱが芽吹きだした。
本日ついに花を咲かせました。

それで今週の締め切りが守れる。
それで雑誌のスペースが埋まる。
そうすれば家を出て他の仕事に行ける。

ーーー俺が植物だったらよかったのにな

それにしたって少しくらいは太陽が光を照らしてくれていただろう。
けれど放任主義を標榜していた戸川は、まるでそれが仕事であるかのように俺を放置し続けた。
そして俺を観察し書き続けていたんだーーー

その観察記は世間に発表され、興味や好奇の目にさらされる。
人々の間でパブリック、公衆的なイメージが構築されていく。
俺は強制的に仮面をかぶらされた。
とても息苦しく、重苦しい仮面を。

自由という観察ケースの中。
俺にとって愛と言う名の太陽はいつまでも昇ることがなかったーーー

あたしのママン/NERO

(続く)
(挿絵:ミロ

 

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