青い部屋

ぼくのママン其の伍:おじさんおばさんとおばさんおじさん

mama06

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前が後ろで 後ろが前で 
左が右で 右が左で 
教えてよ ハンプティー
このぼくに タンプティー

oh 目眩するくちづけで
oh 絶望感へ上り詰めてく

目の前にある あべこべの世界へーーー
真っ逆さまに さかさまの世界へーーー

空が大地で 大地が空で
朝から夜で 夜から朝で
履きかけの パンティー
おろしなよ キャンディー

oh 大胆な腰つきで
oh 絶頂感へと堕ちていく

目の前にある あべこべの世界へーーー
一直線に よこしまな世界へーーー

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おじさんであり、おばさんーーー
おばさんであり、おじさんーーー

俺の周りにいる大人たちはほとんど皆、肉体と魂があべこべにできていた。
今で言う、レズビアンやゲイ。
その頃はオナベとかオカマとかと言っていた。
みんな『青い部屋』という特殊な店の魔力に魅せられ、戸川昌子、そしてシャンソンの世界に引寄せられてやってきて、いつの間にか居着いてしまっていた人たちだ。

ーーーうちの商売は金物屋よ。鍋と釜ばっかり置いているんだから。母は自嘲気味によく言っていたものだったーーー

けれど、幼い頃の俺にとってはそれが当たり前のことだ。
男は女言葉を使い、女は男言葉を使うものだと思い込んでいた。
だから、今でもごくたまに女言葉が出てしまう。
注意はしているものの、よくそれが原因でゲイだと勘違いされることがある。

彼らは皆、心の奥底に言いようのない闇を抱えながらも、頭はとても聡明であり、なによりエンターテイナーだった。
男や女のストレートな武器が使えない分、彼らは皆捨て身に見えた。
彼や彼女らの魅せるお道化た行動の数々。

例えばその場でブラジャーやパンティーを脱いで俺にかぶせてみたり。
公然の場で改造中の性器を露出して披露してみたり。
トイレに俺を連れ込んで、マスターベーションまで見せられたりした。

お客や俺を驚かせたり笑わせるためなら、彼や彼女らはなんでもやった。
戸川動物園と呼ばれたその店、『青い部屋』は幼少期の俺の価値観に多大なる影響を与えたのは間違いない。良くも悪くもだけれどーーー

そのオナベの中にひとり、『サムライ』と呼ばれた女がいたんだ。
胸にさらしを巻き、いつも糊の利いたスーツを着こなしていた。
戸川の身の回りの世話から付き人までをこなし、よく俺に優しく接してくれた。
悩み事を聞いてくれたりもした。
周りには戸川のイエスマンが多かった中で、唯一俺の立場から一緒にものを考えてくれたのがサムライだった。
幼い頃から独り寝が多く、寝付きの悪かった俺の枕元にたまに来ては、なぜか軍歌を歌ってくれたんだ。

ーーーブンブン荒鷲ブンと飛ぶぞ
ーーー勝ってくるぞと勇ましく 誓って国を出たからは

だから、なぜだか今でも軍歌をよく憶えているんだ。
シャンソンに軍歌に童謡。
俺の音楽的かつ情操的なルーツはかなりいびつで異端なものだなと今になって改めて思うよーーー

NERO/マドマアゼル・シャンティ・ブルース

(続く)
(挿絵:ミロ

 

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