青い部屋

NERO闘病記⑫:二度目の心臓停止ーAEDによる電気ショックで蘇生

diary12

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ーーー術後五日目。
ICU(集中治療室)から病室に移ることができた時だった。

点滴ツリーと呼んでいたポールからもどんどんと器具が外されてゆく。
病室の中だけだけど、自由に歩き回り、自分で洗顔したり、お茶を淹れたりもできる。
少しづつ生活がとり戻っていくのを感じ、確かに回復してる手応えを感じていた。

何より嬉しかったのは、手術跡からでる出血を排出するためのホースがとれたことだ。
腹から直接挿入されたホースは常に血で染まり、いやでも手術の記憶を蘇らせる。
パジャマのポケットに入れられた、その血袋がなくなっただけでもずいぶんと気持ちが晴れやかになったものだ。

順調に進むリハビリへの喜びをノートに書き留めていた
ーーーそのとき

何の前触れもなくーーーいや、軽い浮遊感を感じたか?

ーーーそのまま俺は気を失ってしまったーーー

ーーまた闇だ
ーー真っ暗闇
ーー時間が飛ぶ

「ーーさん!ーーさん!!」

なんだ?
まただ。
遠くの方から声が聞こえる…
手術後の目覚めた時と同じ感じ…
目が覚めた時は床に寝かされ、10人近くの医者や看護師に見下ろされていた。

「不整脈でまた心臓が止まっちゃったの。倒れていたんですよ、部屋の中で。だから急いでAEDを使って電気ショックで蘇生したの。とにかく、今からまたICUに運ぶから。」

いやだ、いやだよ。
またICUに行って初めからやり直しなんて。
絶対にいやだよ。

せっかく術後順調に今まで来て、気持ちも少しずつ前向きになって、これからは回復する一方だとばかり思い込んでいた。それなのに…

ここからまた逆戻りなんて、あまりにもひどすぎる…
そう思って泣きたくなった。

「大丈夫、すぐ戻るから」

主治医の先生の言葉に慰められ、ICUへと。

一度すっきりとした点滴ツリーに、またいくつもの機械が飾られる。
不整脈の薬を増やし、心臓のペースメーカーも付け、なんとか状態は安定してきた。
良かった…自分の中で一番恐れていた再手術にはなることはなかった。
そして主治医の言う通り、その日のうちに病室に戻ることができた。

しかし…突然何の前触れもなく”ブラックアウト“するとは…
心臓の手術後というのは本当に微妙で、危険をはらんでいるのだと再確認した。
あんなに急に気を失ってしまったら、ナースコールを押すことさえできやしない。
ましてやこれが病院でなかったら…

心臓発作には本当に運不運が付きまとう。
今回気を失ったのが椅子に座っている状態だったから良かったものの、立っていたら頭を打つ場合もあるし、駅のホームだったら転落する危険もある。
主治医の先生の話しだと、これは手術後に見られるよくある反応で、きちんと回復して退院したらこういったことはほぼないということだけれど、二度の心臓停止を経験すると、なんというか死がとても身近なものに感じてくる。

死は遠いどこかの話しではない。
すぐそばにいる友達だ。
自分の中ではもう、生きているのが当たり前という感覚は消えた。
明日という日は自動的に永続的にやってくるものではない。

常に死を内に秘め、生を実感しながら生きよう。

人生の時間はいつだって有限だ。

ふと、昔から好きだった言葉が腑に落ちた。

武士道とは死ぬことと見つけたり。

死を意識するということは生を最大限に活かせることなんだ。

(続く)
(挿絵:ミロ

 

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