青い部屋

NERO闘病記⑧:光りあれ!

diary08

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ーーー光だ
眩くて
暖かくて
懐かしい
そんな光だったーーー

手術のとき、不思議なくらいに気持ちは清らかだった。
膝の上に置いた聖書。その言葉をまばらに追いかけながら、祈りで心を満たしていた。

ーー午前九時。迎えがくる。
ストレッチャーへと移される。
まるで祭壇へと上るような気持ちだった。
手術室へと向かう道程を不思議なくらい冷静に見つめている自分。

手術の行程は事前にいやというほどに聞かされていた。

まずは開胸。胸を一文字に切り開く。
しかし胸骨があるためそれを切断し、心臓をむき出しの状態にする。
動いているままでは心臓を手術できないため、一度血流を人工心肺へと移し替え心肺を停止させる。
心臓を停止させたまま炎症を起こしている内膜を除去。破損した弁膜を人工のものと取り替え、場合によってはほかの大動脈などの器官も交換する。それから心臓を戻し、胸骨をつなぎ、人工心臓から血流を戻して蘇生する。そういう手術。

大げさでも何でもなく心臓手術や脳手術は、一度死ぬ覚悟を持って望むべき手術だと俺はおもう。
それは、肉体的だけの意味ではなく、精神的にもだ。
心臓はハート。ハートのある場所。
だから、手術前日まで俺は文章を書き続けていた。
祈りと自分をひとつにするために。
目覚めたあとからの闘いに負けないために。
生まれ直すために。
まるで巫女のような気持ち。

ーーーーーーーーーーーーーー

手術用のライトが俺を見下ろす。
点滴用のラインから麻酔が身体へと流れ込む。
次の瞬間、意識は彼方へと飛んだ。

ーーーーーーーーーーーーーー

なんだろう
手術中の記憶なんてあるはずもないのに
真っ暗でなにも感じるはずなんてないのに

感覚なのか…
イメージなのか…
生まれた時の記憶なのか…
夢なのか…
祈りなのか…

ーーー光だ
眩くて
暖かくて
懐かしい
そんな光だったーーー

そんな光に包まれていたんだ

(続く)
(挿絵:ミロ)

 

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