青い部屋

NERO闘病記⑦:手術へ・・・

これが手術前最後の投稿になる。どうしてもここまで書いておきたかった。
帰ってきたらまた逢おう!

diary07

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ーーー手術。
いざそうなるとやはり症例数と実績数の多い専門病院がいい。
そういうことになり、救急車で病院間を緊急搬送されることになった

救急隊員たちが狭い病室になだれ込む。
ストレッチャーに乗せられ、移動用のボンベからのエアーに付け替えられる。
心拍数は?酸素値は?意識はありますか?すこし動くことはできますか?

矢継ぎ早に流れていく言葉たち。病室は騒然となった。

確かに呼吸は浅いけれど、動けます。大丈夫、大丈夫…
なぜか隊員たちに気を使う自分がいる。

緊急車両が通過します…そのまま一時停止で…ご協力ください…
サイレン、拡声器、心電図の音ーーー

ーーー狭い車内。
同乗する母親のなんとも憔悴した顔よ
83にもなる母の疲れきった横顔
沈痛な面持ちで身動きさえしない

ごめんな…
ごめん…

思えば不思議な親子関係だ
闘い合いながら 守りあい 
憎しみながら 愛しあい 
傷付け合いながら 癒しあってきた

師弟 友達 仲間 家族 
そして俺の最後までの味方であり最大の敵だった
様々に形を変えながら、愛憎の果てに今がある

長い長い親と子の物語ーーー

ーーー気がつくと新しい病院に到着していた。
救急用の搬送口がパックリと口を開く。
ストレッチャーに乗せられ行き着いた先きは、ICU(集中治療室)だった。
救急搬送されてきたため即手術をとのことだった。
意識がある状態の俺を見て逆に驚いていたみたいだった。
即手術という医者と話し合い、3日の猶予をもらった。
人工弁に置き換えるにしても、生体弁にするのか、機械弁にするのか、
その判断によって今後の人生が大きく変わってくるからだ。

ほんの数日間の思考期間。
信頼の置ける医師との会話の中で
手術への決意は固まったーーー

ーーーこの時期。
意識ははっきりとしていた。
思考はとてもクリアだった。
全てが透き通るように見えていた。

頭の中に次々とイメージが沸き上がってくる。

ああ俺はまた言葉を書きたかったんだと解る。
あの頃のように言葉で描きたかったんだと識る。
この俺の目に映る世界と詩を。

言葉は俺の鎮静剤。そして愛人。恋人。
苦しみも、悲しみも、畏れも、痛みも
泣きたい夜も、切ない恋も、見果てぬ夢やあこがれも…

おまえがいつも解放してくれた。
おまえがいつも癒してくれた。
おまえはいつも夢見させてくれた。
おまえがいつも救ってくれたんだ。

子供の頃からノートの切れ端に書き付けていた
愛 祈り 感情 血 叫び 喜びーーー

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『ひとつの詩と死』

雨に濡れた人通りの少ない交差点。薄暗い街灯。通行人は誰もいない。
その中央に立ち尽くしている俺がいる。
どこから来たのか、どこへ行くべきなのか、なにもわからず、なにも知れない。

しばらくすると方角もわからない一方の路地から騒がしい一団がやってきた。

さあ、葬式だ
埋葬の準備をしておくれ
彼の好きだった薔薇の花を敷き詰めよう

十字架 鐘の音 純白の鳩 漆黒の鴉

葬列は続いた 長く長く 三つの街をまたいでどこまでも

彼の好きだった詩を読もう
彼の愛した美を偲ぼう

みんな口々に彼のことを 彼について語ったけれど
誰もが彼を誰かさえわからない様子だ
列が列を生み出し 俺も最後尾へと並んだ

彼の身体にぴったりの穴
棺がそこに納まる
墓掘り人夫が参列者にスコップを渡し、参列者がひとすくいづつ土をかけてゆく
餞別 惜別 一枚のコイン

やがてスコップが俺の手に渡された…

俺は…俺の手で…俺を…埋葬している

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ーーー神様

光。祈り。新しい心臓。
新たなるこの身体と心が、愛の力で満たされますように。
こんな俺に愛や祈りをくれた沢山の人たちが、いつまでも健康で幸せに包まれますように。
世界中が笑顔で一杯にあふれますように。

心から、そう願っています。

どうか明日、俺は生まれ変われますことを…
そしてまた、何気ない、それでいて特別な一日をみんなと共に過ごせますように…

みんな、みんな
本当に大好きなんだ
本当に、本当に大好きだよ

行ってくる
待ってておくれ

心より、愛を込めて
NERO

(続く)
(挿絵:ミロ)

 

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