青い部屋

NERO闘病記⑤:生と死と勇気と祈り…と

diary05

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ーーー入院から3日目。
生と死を測りにかけてみた結果が出た。
まずは熱を下げる。
それが昨日の集まりで話し合った答えだった。
熱を下げ感染症をやっつけないと、手術だって通常のものよりかなり危険なものになる。

当面向かう方向が投薬治療で、正直言って自分の中で少しほっとしていた。
まだろくすっぽ知識もない、そんな病気を宣告され、生死を賭けて突然手術ですといわれても、自分の中で整理が全くつかない。まずは知りたかった。自分のおかれている状況を。正確に。
幸いなことに自分の自覚症状はまだ発熱のみ。

この猶予のうちに自分の人生のこと、仕事の引き継ぎ、そして今、自分に何ができるのかを考えよう。見極めよう。そんな風に考えていたーーー

病院の駐車場にちょっとしたガーデンを見つけた。
無表情なビルに囲まれた中にあるちょっとした自然。
そんなわずかな自然の中にも、小鳥や蝶が長い旅路の休息にやってくる。
車椅子から降りてそこに置かれたベンチに座ると、つがいの小鳥が二羽俺の隣にやってきて、また飛び去っていった。自分の何倍も何倍もある高層ビルを飛び越えていくんだ。

その小鳥たちが輝きの向こうへと融けて目で追えなくなるまで、俺はただまぶしい太陽と青空を見上げていたーー

ーーー俺はいったいこの状況で何ができるんだろう。
自分の身体、自分のことなのに。
なにも…なにもできないな。
自由にできるものだった、自分のものだと思っていた、いつでもどこでも一緒にいた、この身体。
俺の一部。俺の相棒。俺自身。

そいつが壊れちまった。
そいつが悲鳴を上げている。
そいつが今もう死の淵に立って叫んでいる。

無力感が心を支配した。
ひどく絶望的な気持ちになった。

いったい何をこんなに畏れているのだろう?
手術?傷跡?仕事?死ぬこと?生きること?
人生が変わってしまうこと?

ーー恐怖
ーー圧倒的な恐怖
ーー自分の人生、その流れを大きく変えてゆくちから
ーーその大きさは自分の目でとらえることさえできない

人のちから及ばぬ存在の前では、人間なんてひれ伏すしかない。
運命の流れに身を任せる以外にない。

受け入れろ

運命の流転。そのとき。
まるで自分は激流の中の木の葉だ。

祈り。自分のできることといえばそれくらいのもの。
それを教えてくれたのは人だった。雲だった。空だった。

ただ力を抜き、呼吸を地球のリズムに合わせてゆく。
そうすると少しずつだけどわかってくるんだ。

ひとりじゃない
ひとつじゃない

大地も、空も、星たちも
おまえも俺も、細胞も、病気も
畏れていた運命の流れさえも

全ては全ての
一部分なのだと

だから…
おまえと俺は友達だ

(続く)
(挿絵:ミロ)

 

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