青い部屋

NERO闘病記②:混乱と旅立ち

diary02

=============================
「このまま緊急入院して下さい。心臓に重大な疾患があります。」

医者の発するその言葉に頭が真っ白になった。
熱のせいもあり、しばらく呆然として聞き返す。

「は??どういうことですか?」

確かに高熱が続き異常な状態だとは認識していた。
けれど、まさか心臓と関係があるとはまるで考えていなかった。
緊急入院?昨日まで一人で温泉に行ったりしていたのに??
頭の中ではまるで整理がつかなかったが、医者の深刻で申し訳無さげな顔が事の重大性を物語っていた。

「血液検査とエコーなどの結果、現在心不全状態にあり感染性心内膜炎の可能性が極めて高いのです。これは命に関わる状況ですので、今すぐに入院が必要です。脳卒中などに至る場合もあります。」

心不全に心内膜炎、脳卒中?
まるで自分とは関係ないと思っていた病名の数々。知識も無い。
とにかくちょっと待ってくれ!言いたいことはわかったけど一度家に帰らせてくれ!
仕事はどうするんだよ!ライブの予定だってあるんだよ!誰も代わりなんていないんだよ!
気がつくと医者に向かって語気を荒げる自分がいた。

「もちろん、準備をして頂いて結構ですがとにかく気をつけて早めに戻ってきて下さい。」

その言葉で逃げるようにして病室を出た。
一瞬でも早くこの現実と自分を切り離したかった。

俺が死ぬ?心臓病?あいつ何言ってるんだ?頭おかしいんじゃねえのか?
付き添いで来てくれていたピアニストの中上さんに向かって、なかば八つ当たりのように怒鳴り散らしていた。突然やってきた黒雲のような運命。受け止めきれる用意も無い。

なかば夢見心地の状態で家に帰る。
すでに連絡を受けていた母がリビングのマッサージチェアに座りながら呆然と宙を見つめていた。

「なあ、俺死ぬかもしれないんだってさ。」

悲壮感のかけらも無い日常会話のように病院での出来事を伝えると、母もさも普通の出来事のように「うん」とうなずいた。目を合わせようともしない。お互いに現実が受け止められなかった。

「じゃあ、いってくるよ。帰りはいつになるかわからない。」

それだけ言い残し病院へ行く準備に取りかかる。
着替え、パソコン、読み途中の本…思いつくままに詰め込んだ。
いつもライブに行くときに持っていってるキャリーケース。
まさかこんなことに使うとは想像もしていなかった。

(続く)
(挿絵:ミロ)

 

  • カテゴリ一覧

  • 青い部屋チャンネル
  • NERO 公式ブログ
Copyright (c) 2013-2017 Aoi-heya All Rights Reserved.